国が育てたAmazon、Amazonが育てた国

以前の記事でも言及したが、Amazonのヘルスケア分野への進出ニュース。

日本でも米国でも医療制度、保険制度というタイトルは利権の巣窟のようで、なかなか一朝一夕での解決には至らない問題が山積している。

だが、断言してもいいがAmazonは西側 (イマドキいささか古い言い回しか) の先進国に医療、薬剤処方、保険、介護、埋葬葬儀、全てを含めたヘルスケアビジネスで新たなビジネスモデルを確立するだろう。しかも、そう遠くない未来にだ。

恐らくはこれこそがAmazonを取り囲むPoliticsの最終目標なのではないだろうかと勘繰ってしまうほどに。

 

Amazonという存在を知るにはベゾス氏の講演やインタビュー記事などに目を通すのが最短の道だ。

だが、筆者はもう少し違う角度からAmazonという存在を見てみた。

Amazonの設立は1994年、カタブラという社名でインターネット書店という業態で設立されたことは今や誰でも知っていることなのだが、実際にAmazonとして社名変更して本格的にサービスを提供し出したのは1995年からだ。

当時の米国は1992年の大統領選で再選が取りざたされていた共和党ジョージ・ブッシュ元大統領 (パパブッシュ) が民主党ビル・クリントン元大統領に負けて、米国民が民主党政権 (リベラル) に国の舵取りを任せた時代だ。

クリントン元大統領は次の1996年の大統領選でも再選を果たし、この時期の米国は長期民主党政権であった。

クリントン元大統領の政策は時に批判の的にもなったが、彼の舵取りのもと米国はIT産業に経済の力点をシフトさせていく。

その思想的基盤が彼の有名なパリマ・ハリマン女史のバックボーンたるチャイルド陣営 (こんな風に書くと陰謀論者と鼻で笑われるだろうが) 由来のものか、そうでないかは筆者の知るところでは無いが、Amazonクリントン政権時代に早々にそして着実にその礎を確固たるものとしていく。

時代は巡り、2000年の大統領選では共和党ジョージ・ブッシュ元大統領 (サンブッシュ) が大統領となり共和党政権が始まる。

この政権下では周知の通り、戦争やテロが目立ち、なんと日本では第二次世界大戦以降、ご法度中のご法度となっている情報機関による通信盗聴の許可が公に認められることになった(勿論、当時の世相からして対テロリズムへの対策としては非常に有用であることは間違いないが)。

時を同じくして、Amazon web service の思想的設計が始まり、論文の発表と相成るのである。

そして近年、AWSは米国情報機関の基幹システムに導入されていったのである。

米国政府とAmazonという存在について、筆者の強引なこじつけに他ならないかもしれないが、無関係ということはないのだろうと思う。

 

奇しくも米国を始め先進国では戦争や飢餓に怯えることが無いご時世だ。

人間の欲望は洋の東西を問わず、また時代を問わず不老不死へと向いていく。

その是非は置いておくとしても、米国の官民主導によるヘルスケアビジネスの夜明けはAmazonという巨像によって結実していくのだろう。

 

 


21世紀最大のビジネスチャンス「ヘルスケア」に挑むAmazonの可能性 | 湯川鶴章 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト